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大阪高等裁判所 昭和53年(ラ)112号 決定 1979年3月23日

抗告人 関昭一郎

相手方 関昭治

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告代理人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨と理由は別紙記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  抗告人の除籍謄本によると、同人は昭和五〇年一一月二四日死亡した事実が認められる。そうすると、抗告人の推定相続人廃除の申立後、原審判前に同人について相続が開始したこととなるから、民法八九五条により、原裁判所は親族、利害関係人又は検察官の請求によつて遺産の管理に必要な処分として遺産管理人を選任し、同人をして右申立を受継させるべきであり、右受継のない限り、申立についての審判をなし得ないものである。このことは右申立が弁護士である代理人によつてなされていても、本件申立のように専ら身分上の問題にかかわるもので財産上の紛争解決を直接の対象としない家事審判事件についてはその性質上民訴法八五条の準用がないので、前記手続の例外とはなり得ない。

しかるに、原裁判所は右受継手続をとることなく、右申立の実体審理をしたうえ、理由がないとして却下の原審判をしたのであるから、右審判は違法で取消を免れない。

2  ところで、本件抗告は既に死亡した申立人名義で、抗告審における代理権をも与えられていた原審申立代理人弁護士小野武一が代理人として申立てたものと認められるが、家事審判規則一〇〇条二項、二七条二項によると、原審判に対する即時抗告権者は申立人に限られ、同人死亡後は前記受継手続によつて選任された遺産管理人に限られるから、右申立代理人も右抗告権を有しない。

したがつて、本件抗告はその権限のない者によつてなされたものであるから、不適法である。

3  なお、本件原審判の正本は昭和五三年三月七日申立代理人あてに送達されているが、右は受領権限のない者に送達されたもので、何ら送達の効力を生じないから、現に未確定の状態にあり、前記のとおり遺産管理人が選任され、同人に右送達がなされることによつて即時抗告期間が進行するので、その間に同人において即時抗告を申立て、原審判の取消と原審への差戻を求めるべきである。

4  よつて本件抗告を却下し、民訴法九九条、九八条二項に従い抗告費用は抗告代理人の負担として、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 村瀬泰三 裁判官 高田政彦 弘重一明)

別紙<省略>

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